美術の図書室 

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パステル

また春が来た。



 彼女の部屋でsexを終え、余韻に浸りながら、裸で二人別々の場所で休んでいる。生暖かい風が窓から流れてくる。こうやっているともう何もいらない状態になる。正に生の謳歌だ。時間も止まったかのようだ。


 この話は分厚い表紙の本より、パステルカラーの絵本で描きたくなる。本棚の一番手に取りやすい所に飾って置こう。僕の全ての恋愛がここに凝縮されているからだ。たった一ページ開いただけで甘い思い出が体を春の陽気の中に誘ってくれる。


 それはもうこれが何度目の恋などと数えなくなった頃だろう。気がついたら僕らはいつも一緒にいた。歌歌いの彼女は決して多くは語らず、いつも僕のくだらない話を聞いてくれた。話す事がない時にはリクエストして、ウィスパーでクレモン・ティーヌの[男・女]を歌ってくれた。


 付き合い始めてから2回僕は浮気しようとしたことがある。一度は彼女と浮気しようとした相手とその友達と4人で食事をし、彼女はこれから仕事があるからと席を立ち、去って行った。僕は残されて始めて彼女の存在の大きさに気づいて後を追いかけたものだ。2度目も同じようなもので彼女を追いかけたが、強く「遊んでおいで」と言った彼女が泣きながら歩いてるのを見かけた。その涙を見て以来、遊び半分の浮気心はなくなった。


 言い忘れたが彼女は年上の女性である。


 そうこれは僕の20代の頃の話である。5歳差だったかな。まだ夢を見ていた頃、油絵を描いてた頃のことだ。まだ恋愛が性的な意味合いが強い頃の話だ。


 実はこの話が一番長く柱を成すはずだったが、風の知らせでその彼女がもう結婚したので、掘り下げるのはここまでにしよう。 


     感謝と共に「お幸せに」だけを最後の言葉にする。


更新日:2012-03-28 01:48:10